こんにちは、ボイストレーナーの金子です。
Aの成功例
Bの失敗例
やっているトレーニングを聞いた瞬間、失礼ながらこう思いました。
「あ、、これは昔の僕だ。。絶対にうまくいかないパターンだ。」
と。
一瞬でうまくいかないことがわかってしまうのです。
理由はシンプル。
彼のトレーニングには”明確な目的”がなかったからです。
なんとなく小さな声で地声と裏声を繋いで、
なんとなく裏声にエッジボイスを混ぜてみ
それぞれのトレーニングに繋がりがない。
ひとつひとつのトレーニングに
もちろん、それぞれのトレーニングの目的は
〇〇という筋肉を鍛えたら、■■という効果が出る。
そして、
悪い副作用が出るから、××というパーツをトレーニングして
バランスをとる。
といったように、やったトレーニングが次のトレーニングに繋がらなければいけない
自ら声を悪化させる人たち
なんとなくやっているトレーニングが、奇跡的に彼の喉の状態にカチッとハマっていたので、
ちょっとずつミックスボイスの習得に近づいていたんです。
でも彼は、なぜか
ミックスを掴むまであとすこしのところで「別のトレーニングを追加した」というのです。
僕はふしぎでしょうがなくて、思わず聞きました。
「なぜ、うまくいっていたのに余計なトレーニングを加えたのですか?」
と。
そしたら彼はこういうのです。
「換声点で声がブルブル震えたので、やり方が間違っているのかと思ったんです。
だから不安になって他のトレーニングで修正しようとしたんです。」
…
僕はこれを聞いてハッとしました。
“うまくいっていることに気づかない”のが一番の恐怖だ。と。
というのも、彼の声の震えは
「正しい声の震え」だったからです。
いわば、ミックスに必要な筋肉群がバランスを取ろうとしているときに生じる声の震え。
綱渡りでたとえるなら、
落下しそうになりながらも、両手でバランスをとりながらヨロヨロ歩けるようになってきた段階。
本当なら、「上手くいき始めた!」とガッツポーズしていいくらい喜ばしい状態なんです。
実際、僕の声が”正しく震え”だしたときは、
「やったあああ!ミックスに近づいてるってサインだな!」
と1日中ウキウキしてましたから。笑
でも彼には、その知識がなかった。
だから、せっかくいい方向に向かっていたのに、
相性最悪のトレーニングを付け加えて、全てを台無しにする
などという、暴挙に出てしまったわけです。
やっと立ち上がって歩き始めた子どもに蹴りを入れたようなもんです。
実際、あのまま適切なタイミングまでトレーニングをやっていたら、
長くてもあと3ヶ月もやっていれば、低音と裏声がズルズルと繋がってたでしょう。
つまり、ミックスボイスの卵が完成していたということです。
知っているか、知らないか。
たったそれだけの知識の差が、彼を5年間苦しめた魔物の正体だったのです。
こんなふうに、ほんの少しの差が
声を悪化させてしまってるケースは多いです。あまりにも多すぎます。
あと一音最高音を下げて練習していれば、うまく筋肉が育ったのに…
トレーニングの順番を入れ替えるだけで、地声感が出たのに‥
あと1ヶ月トレーニングを早くやめていたら、地声と裏声のバランスが整ったのに…
みんな一生懸命頑張っているのに、頑張り方を間違えている。
いや、間違えているというか、そもそも知らない。
だからこそ、僕は
頑張る方向性をたっぷり伝えていきたいと思っているのです。