こんにちは、ボイストレーナーの金子太登です。
連日たくさんの質問をいただいて嬉しいです。ありがとうございます。
その質問の中で特に多かったのが、
“金子はどんなふうにミックスボイスを習得してきたのか?”
といった質問だったので、
今回は、僕自身がどんな流れでミックスボイスを習得できたのか?
詳しく話していきたいと思います。
公式ラインでも何度かお話ししている通りで、
僕は元々、かなり歌が下手な部類の人間でした。
• サビの高音はおろか、低音域のAメロから喉が苦しい
• 2、3曲歌うと、声が枯れてまともに裏声が出なくなる
• どんなに練習しても、頻繁に音程を外す(音痴)
…etc
そんな調子だったので、
当然、カラオケに行っても歌える曲はほとんどなかったし、
中学生の頃の合唱コンクールの練習のときには、
あまりの歌の下手さにクラスメイト全員から大爆笑されたほどです。
あの日の身体全身が震えるほど悔しかった感覚。
顔が真っ赤になっていって、すぐにでも教室から飛び出したいほど
恥ずかしかった感覚。
今でも昨日のことのように鮮明に覚えています。
ただ、そこまで歌の才能がなくても、
“どうしても上手く歌いたい”
その気持ちをねじ曲げることはできませんでした。
そこで僕が初めにやったことは、
インターネットでボイストレーニングの情報を調べて
コツコツ実践していくことです。
当時は、今と違ってネットにもボイトレの情報が少なかったのですが、
それでもミックスボイスに関する情報はあったので、
ネットの海をバチャバチャと音を立てて泳いでいました。
小声で地声と裏声を繋いだり、
裏声にエッジボイスを混ぜて奇声になったり、
よく分からず、ネイネイネイネイ、と連呼したり、
唇をプルプル震わせてみたり、
‥etc
ただ、どんなに練習を頑張っても
ミックスボイスを習得することはできなかったんですよ。
この時は、本当に絶望しましたね。
誰にも相談することができないので、
どうすることもできなくて、途方に暮れていました。
そんなとき、
近所の大きな本屋をぶらぶらしていると、
ある一冊のボイストレーニングの本が目に飛び込んできたのです。
そして、ぼんやりとその本を読んでいたそのとき、
全身に電流が走るかのような衝撃をうけました。
なぜならその本には、
手順① 地声と裏声を分離する
手順② 地声と裏声を強化する
手順③ 地声と裏声を混ぜる
こんなことが、当たり前のように書かれていたからです。
それまで僕はミックスボイスの習得に特化した練習ばかりやってきました。
ミックスボイスのコツを試す → やっぱりできない。
その繰り返しだったのです。
だからこそ、
“いきなり地声と裏声を混ぜてはいけない”
“まず地声と裏声は分けるべき”
このシンプルな一つの真実に出会った時、
あまりにやっていたことのベクトルが違いすぎて、衝撃でした。
今までの常識がガラガラと音を立てて崩れていくような感覚に陥りました。
ただ最初は、素直にこの手法を受け入れらなかったのも正直なところです。
「そんなことやって何の意味があるのか?
むしろ地声と裏声を分けるなんて、地声と裏声を混ぜるミックスから遠ざかるんじゃないか?」
と、疑っている自分がいました。
そして、何よりこの手法を認めたら
今まで一生懸命やってきたトレーニングや、これまでにかけた時間を全て否定することになります。
だからこそ、最初は素直に受け入れられなかったのです。
ただ、もうそれ以外に頼るものがなかったので、
「ダメ元で試してみて、ダメならやめればいいか…」
そんな気持ちで、藁をもすがるような気持ちで
新しい手法を試してみたわけです。
そしてそれから、2週間くらいたった頃だったと思います。
ふと裏声を出してみると、
裏声の声量が前より上がっていることに気づいて、明らかにパワフルになっていることに気づきました。
さらに、地声の体感も楽になっていて、明らかに今までになかった変化を感じるのです。
今までにない確かな手応えを感じる。。
「この方法ならいけるかもしれない…。」
そう思って、本に書いてあることを何回も読み直し、毎日トレーニングしていきました。
地声で出せる音域も
成長が完全に止まってしまい、それ以上伸びることはありませんでした。
今思えば、練習法が悪かったのはなくて、
(もちろん、基礎的なことしか書かれていなかったのもありますが)
“トレーニングのやり方”が間違っていたのです。
自分一人でやっていたわけで、間違ったところを指摘してくれる人なんて
いません。
もうこれ以上成長するのは難しい…
そう思い、著者のボーカルコーチのレッスンに通うことにしたのです。
コーチのレッスンを受け始めてからは、
教えてもらう情報、トレーニングの注意点、
全てが目から鱗でした。
唇?舌?顎?…etc
そんなところも分離できるの?強化できるの?調整できるの?
そんな新しい発見だらけなんですよ。
それに、
自分のやり方が間違っていても、すぐに修正してくれるので
「今まで必死にやってきた時間は、なんだったのか。。」
と、昔の自分を呪いたくなるくらい効率的です。
そこからは、もうボイトレが楽しくて楽しくて。
毎日、あらゆる喉のパーツを分離して、強化して、調整していきました。
コーチから教えていただいたメソッドと、トレーニングの注意点を、
大学ノートにガリガリとメモして、
いつでも持ち歩いて練習しました。
メモ紙がボロボロになるまで確認しながらトレーニングしていましたね。
そんなふうにして、
無我夢中で言われたことをそのまま素直にやり続けた結果、
今まであんなに時間をかけてできなかったミックスボイスを
土台を固めてからは、あっさり習得できてしまったのです。
あまりにもシンプルに習得できたので、自分でも拍子抜けしたほどです。
そしてこの経験から、僕は身をもって理解したんです。
ミックスボイスの習得には、“土台固め”が大事なのだと。
僕自身、ミックスボイスを習得することができなかった本当の理由は、
ミックスボイスを習得するための“土台”がグラグラだったからなんですね。
野球で言うなら、
筋トレしません
ランニングもしません
(つまり土台固めはしない)
でも、150キロの豪速球を投げる練習だけはします。
みたいなイメージですね。
…そりゃ、無謀にもほどがありますよね。
あのUVERworldのボーカル TAKUYA∞さんですら、
プロとして大活躍されている
今でも、地声と裏声の基本的な発声練習を欠かさないそうです。
現敵バリバリのプロが土台を大事にしていて、
ど素人だった金子がやらない、ってどんな道理やねんって話だなと。笑
冗談抜きに、
“土台”
このシンプルな2文字の重要さに気づくまでに、実に数年もの時間を費やしてしまいました。
そして昔の僕と同じように、
土台がグラグラなまま、ミックスのコツ探しに右往左往してしまっている方が多いのも事実です。
実際、僕と同じ頃からミックスボイスの練習”だけ”を
続けている知り合いがいますが、
いまだに地声の音域は話し声の域を抜けられなくて、
カラオケやライブで歌える曲のレパートリーも3年前と全く変わっていないそうです。
だから気の毒になって
おせっかいだろうな…とは思いながらも
「地声と裏声の分離からやったほうがいいよ」
と何回か伝えたのですが、
「俺は俺なりに勉強しながらやってるよ」と
なかなか聞く耳を持ってもらえませんでしたね。。
なんかこう、昔の頑固な自分を見ているようで、正直やるせないというか
ちょっと悲しい気持ちになりましたね。
もちろん同じ経験をしてきたからこそ、気持ちはよく分かりますけどね。
その時はミックスのコツ探しで必死で、それに夢中でいっぱいいっぱいなんですよね。
で、かけた時間が膨大であればあるほど、自分の間違いを認められないのです。
これは、試行錯誤してボイトレしてきた人なら分かると思います。
ただ、もしあのとき彼が
僕のアドバイス通りに素直にボイトレをやってくれていたら、
少なくとも、彼は今頃ミックスボイスで自由に歌えているんだろうな、とは思いますよね。
まあ何をいっても、いつの日か彼が目を覚ましてくれるのを祈るしかないのですが…
話がそれましたが、
地声と裏声を分離して、強化して、融合させる。
3つの手順は、ミックスボイスを習得するなら必須のパターンです。
一見遠回りに見えますし、面倒に思うかもしれないですが、
この公式にカチカチ当てはまめて練習するのが、結局一番効率がいいです。
ぜひ覚えておいてくださいね。
それでは、ありがとうございました。