ミックスボイスを習得した時の話
こんばんは、ボイストレーナーの金子です。
【理想の未来】
今ではその頃に比べればかなり歌唱力を伸ばすことができました。
裏声を出してるみたいな楽な体感で、地声の高音を出せるようになりましたし、
もちろん、周囲の反応も変わっていきました。
友人とTwitterで動画をアップしたことがあったのですが、
それがなぜかバズり、たくさんのお声をいただきました。
感動して涙を浮かべてくれる人、いつまでも歌声を聴いてたいと言ってくれる人まで
自分の中に少しずつ自信が芽生えていきました。
本当に諦めずに頑張ってきてよかったなと
思います。
ただ、こんなことを話すと
「元々歌の才能があったんでしょ?」
と聞かれることもあるんですけど、
全然そんなことないですからね。
僕なんかに才能もセンスも1mmもありません。w
元々は、かなりの低スペックだったと自負してます。
・宇宙戦艦ヤマトもまともに歌えないくらい狭い音域
・蚊の鳴くような裏声っぽい弱々しい高音
・志村けんみたいなキンキンした気持ち悪い声質
・一度音程を外すと嵐のように音程を外すピッチ感の悪さ
いや、、、どこか一つでもいいところはないんかい!w
と突っ込みたくなるような絵に描いたような音痴でしたね。笑
じゃあなぜ僕自身、音痴からでも歌唱力を高めることができたのかというと、
ミックスボイスを習得したからです。
ミックスボイスは、全てのスキルのベースにあるものです。
地声感、声の太さ、声量、声質、ビブラート、
フェイク、がなり、シャウト、ウィスパー、トリル、ヒーカップ、レイドバック、、
全てのスキルの根底にはミックスがあるのです。
だからミックスを習得すれば、芋づる式にあらゆるスキルを習得できて
しまうわけです。
最初に友人に勧められて行ったのは、日本でも最大手のスクールでした。
もちろん最初は「歌がド下手な自分がボイトレなんて行ってもいいのかな?」
と、ちょっとへっぴり腰でした。
でもいざ勇気を出してスクールに通ってみると、そこは最高の環境でしたね。
全面鏡張りのスタジオに、最新の機材。プロミュージシャンとして活躍する先生方。
充実した最高の環境に心躍りました。
そしてレッスンでは、主に高音を楽に出すためのトレーニングをたくさんこなしたんですね。
「頭や鼻に響かせてごらん」
「腹式呼吸が大事だよ」
「肩と喉をリラックスさせてみて」
熱心な先生方が丁寧に教えてくれるので、その通りに練習しました。
でもどんなにレッスンを受け続けても、スキルが伸びることはほとんどなかったんですよ。
高音は苦しいままだし、
キンキンした気持ち悪い声質も変わっていません。
声量は出ないし、地声感もなくヒョロヒョロした裏声っぽい高音。
レッスンに通い続けても、何一つ成長を得ることはできませんでした。
そんなこともあって、結局そのスクールは辞めてしまいましたね。
ただ流石にそれで諦めたくなかったので、
それからも、いろんなスクールに通い続けて
ミックスボイス(高音)に特化した訓練をやっていきました。
たとえば、友人の紹介で
ハリウッド系のメソッドを扱うボイトレに行き、
一生懸命「ネイネイ!ノウノウ!」とスケール練習をやったり、
やっぱり、音楽はブラックミュージックだろ!と
思って、自らゴルペル教室に通ってみたり。
次に通った声楽教室では
「お腹の支えが足りないし、もっと背中から声を回すイメージで!」
とアドバイスをもらい、ひたすら腹筋と背筋トレーニングを繰り返しました。
そして、それでもダメなら…と、今まで貯めてきたお金とバイト代の200万を全部叩いて
音楽専門学校にも通って、毎日教えてもらった課題をやりましたね。
と、こんな感じでいろんなスクールに通って練習を続けたわけですけど、
残念ながら収穫は何もなくて。
「あー自分には歌の才能というものが1mmもないんだな」
と絶望してました。
こんなにたくさんの”その道のプロ”から歌を習って、上手くならないんじゃ、
自分の才能を疑うほかないじゃないですか。笑
もちろん今だから笑い話になってるんですけど、この時は本当に辛かったですね。
こんなことボイストレーナーが言っちゃいけないかもですが、
何度も何度も、歌うことを諦めようとしてました。
ipodに入っていたお気に入りの曲は全部消去して、
使い込んで表紙がボロボロになったボイトレ本たちも押し入れにドカンと突っ込んで。
でも、それでも歌を諦めることはできませんでした。
歌が大好きな自分は、一度でもいいから気持ちよく上手に歌い上げてみる
経験をしてみたかったのです。
人を感動させる歌を歌いたかったのです。
カラオケではお笑い役じゃなくて、主役になりたかったのです。
自分が納得できる魅力的な声質で歌いたかったのです。
しっとりとバラードを歌い上げたかったのです。
アップテンポな曲をかっこよく歌い上げたかったのです。
本音を言えば、馬鹿にしてきた友人を見返したかったのです。
たった1日でもいいから、憧れの歌手の喉と交換できたらどんなに嬉しいだろう…?
そんなことを考えるほど歌が上手くなりたかったのです。
だから、「これでダメなら最後にしよう」
そんな藁をもすがる思いで、最後にボイトレを受けることを決心しました。
そしてそんなある日
Twitterを見ていると、
あるボイストレーナーのツイートが目に飛び込んできたのです。
そこには、発声の理論や仕組みなどがビッシリと書かれてました。
正直最初は、「難しいことばっかり話しててよく分からないなー」
そんな印象でしたね。w
ただ、よく読んでみると本質的なことを話しているし、
理論的でふかく納得できるものが多かったので、
もしかしたら、この先生は本物なんじゃないか?
そう思いはじめている自分がいて。
だからTwitterでDMを送って
先生にダメ元で会いに行ってみることにしました。
そして、体験レッスン当日。
なんと先生が駅に迎えにきてくれると言うので、
僕は先生を駅で待っていました。
それで5分くらい経った頃ですかね。
とつぜん頭がヒヤッとしたので、
空を見上げると、灰色の空からポツポツと雨が降ってきて。
「あー傘忘れた。最悪だー」
そんなことを、つぶやいた時だったと思います。
何やら、めっちゃデカイ男の人がこっちにむかって歩いてくるんですよ。w
身長は余裕の180cmオーバー、ガッチリした体型。
そして、浴衣にサンダル。
そんな大男が前から傘をさして歩いてくるんです。笑
一発で「この人が先生だ」と分かるくらいの凄まじいオーラを放ってました。
そして、僕の前で足を止めた彼は、
「こんにちは、金子くんかな?」
と挨拶をしてくれました。
その声はずっしりとした深みのある声で、
そして、壁にヒビが入るんじゃないかと思うくらいの響きがあったので、
すっかりビビってしまいました。
そしてレッスン場に移動してからは、
そんなビビりまくりの僕を前に、
先生はボイストレーニングの本質をゆっくりと話してくれたんですね。
「今はミックスの練習やめた方がいいよ。
だって、ミックスの土台がないんだもん。
土台がない状態でミックスの練習しても一生高音でないと思うよ」
このとき僕はハッとしました。
僕が今までミックスを習得できなかったのは
ミックスに必要な土台がなかったからだ、と気づいたからです。
発声の土台とは、
ミックス発声に必要な喉の筋肉を鍛えたり、
上手に使えるようにしたりすることですね。
こういった基礎をおろそかにした状態で、一生懸命地声と裏声を繋いでいく練習をしても
ミックスボイスを習得できないのはある意味当然だったのです。
それからというものの、僕は
寝食忘れて、夢中でミックスの土台作りにのめり込んでいきました。
喉のパーツを一つ一つ器用に動かせるように分離して、
分離した喉のパーツを鍛えて、、
と、毎日ワクワクしながら
夢中でミックスの土台作りを進めていったのです。
楽しすぎて
いつでもどこでも、時間さえあればボイトレしてましたね。
大学の講義中も、教場の隅っこでひとり
小さな声で口ずさんでいたし、(迷惑極まりない)
駅のホームでも山手線の電車が通り過ぎる瞬間を狙って、大声で叫びました。
(これも迷惑極まりない)
ちなみに、レッスンを詰め込みすぎて月謝が13万ほどにパンパンに
膨れ上がっていたので
いつものバイトに加えて夜勤の工場バイトを始めたのですが、
そのバイト中ですら頭がもうろうとしながら
床に散らばったにんじんを掃除しながら、裏声の練習をしてました。
こんな話をすると、
「なんでそんなに頑張れたの?」と思うかもですが、
この時は、すでにミックスの習得は確定していて、それに向かって
“後はただやるだけ”、という絶対的な確信があったんですよね。
信じられないかもですが、
ミックス習得までの道のりがハッキリと見えるようになったのです。
喉の筋肉単位でやることが決まっているから迷わなくていいんですよ。
たとえば、
〇〇の声を出すためには、××の点に注意して
▼▼の筋肉を鍛えて、、、
今のタイミングで□□の筋肉を鍛え出すと、
××のパーツが発声の邪魔し出して ミックス習得から遠ざかるから、
注意して、、
こんなふうに、やるべき事がハッキリしたんですね。
すると、冗談抜きでカンニングペーパー片手にテスト解いてるような感覚になったので
「こんなの誰がやっても習得できるやつじゃん。。」
と、絶対的な確信を持って
ズカズカとミックス習得までの道のりを突き進んでいきました。
そして、地声の音域は
D4→G4 → A#4 → C5 →F5…と青天井に伸びていったのです。
こんなふうにして、先生のレッスンを受けてから
あっさりとミックスボイスを習得できてしまったのです。
そして、ミックスを習得してから
あらゆるスキルを次々と習得していけました。
地声のような高音を出せるようになり、
それが爆発的な声量を生み出して、
声に厚みや太さも宿りました。
また、高音に余裕ができたので
柔らかい透き通った声も出せるようになり、
ビブラートをかける余裕も生まれ、
さらに声質も良くなっていきました。
全てのスキルのベースであるミックスを習得したことで、
あらゆるスキルが次から次へと身についていったのです。
このとき、ミックスを習得するための「発声の土台」を固めることの威力を
改めて思い知りましたね。
今までアホみたいに練習して成長しなかった4年間は
いったいなんだったのかと思いました。
そして、もしあのとき土台を固めてなかったらと思うと、
ゾッとします。
今でも、歌が下手だったのは間違いないです。
まずミックスが出来なければ、高音はかなり苦しくなります。
すると喉が上がるので
必然的に高音はニワトリが首を絞められたような
キンキンした細い声になるし、
張り上げを回避しようとしても
ただの裏声に毛が生えたような弱々しい高音しか出せません。
さらに、裏声っぽい高音では声量が出せないから
カラオケで歌えばオケや楽器に声が完全に埋もれます。
すると、周りのサウンドに負けないように
ますます力いっぱい声を絞り出そうとするので
声質を気にする余裕もなくなります。
となれば当然、汚い声質で歌う羽目になるし、
汚い声を評価する人など誰もいないから、歌に対しての自信もなくなって
自由に歌う喜びを知る前に歌を諦めてたと思います。
こんなふうに最悪のループに陥っていたと思うんですよね。
そう思うと、あのとき発声の土台固めを真剣に教えてくれた先生には
感謝しかありません。
歌唱力が高いだけの先生はそれまでにもたくさん会ってきましたが、
本当の意味で指導力が高い先生に出会えたのはめちゃくちゃ運がよかったなと思います。
はい、話が盛大にそれましたね。汗
何が言いたいのかというと、誰でもミックスボイスの習得はできる
ということです。
信じられないかもですが、
実はミックスボイスを習得するための型はすでに
100年前から体系化されているのです。
(もちろん、その型をもとに内容は進化し続けていますが)
〇〇の声を出すためには、××の点に注意して
▼▼の筋肉を鍛えて、、、
こんなふうに、ミックス習得のために
やるべきことは全部決まりきってるんですよ。
だから型通りに実践すれば、誰がやろうと同じ結果が出ます。
マクドナルドのマニュアルみたいなものですね。
バイトの女子高生がポテトを揚げようと、社員のおじさんがポテト揚げようと
全く同じ味になるじゃないですか。
まさにあんな感じです。
ミックスボイス習得の型(マニュアル)通りに練習すれば
年齢、性別、センスに関係なく誰でもミックスを習得して
自由自在に歌うことは可能なんです。
だからもし今まで一生懸命にボイトレして
ミックスボイスを習得できなかったとしても
まだ諦めないでほしいです。
センスのかけらもなかった僕でもできたのだから大丈夫です。
あなたも必ずできます。絶対大丈夫。
僕と一緒にミックスを習得して、どんなフィールドでも活躍できるシンガーになりましょう。
それでは、ありがとうございました。