ベルティングボイスを習得した時の話

 

 

こんばんは、ボイストレーナーの金子です。

 

 

 

僕は、あまりに歌のセンスがなくて

 

中学生でボイトレをポンっと投げ出したものの、

 

先生に教わってからは、意外にもふつうにミックスボイスを習得することができました。

 

 

 

先生に出会うまでは、

 

「ミックスなんて、限られた喉の持ち主にしかできないに決まってる。

声が低い僕には無理だ。」

 

 

と心の奥底から信じこんでたので、できたときは拍子抜けでポカーンとしてました。

 

 

 

で、ちょっぴり自信がついた僕は

 

「僕の歌声はどんなくらいのレベルなのかな?」とふと気になって、

 

ビクビクしながらも、Youtubeのに歌唱動画をアップしてみたんです。

 

 

そしたら、

 

すぐにポツポツコメントがつきはじめて。

 

 

「綺麗な声ですね!」

 

「なんでそんな高い声が出るんですか?」

 

 

正直、僕の歌唱力はまっっっっったくたいしたことないレベルだったんですけど、

 

それでもちやほやしてくれました。

 

 

だから、僕は

 

スマホ見ながら気持ち悪いくらいニヤニヤしてましたね。笑

 

 

 

「まあ、お世辞だよなー」と思いつつも、ぜんぜん悪い気はしません。w

 

 

で、そこまでならまだかわいい話なんですが、その後が最悪で。

 

 

早い話、僕はめちゃくちゃ調子に乗ったんです。

 

 

 

「ミックスボイス習得できた僕って、もしかして天才なんじゃないか?」

 

本気でそう思い始めたんですよ。

 

 

 

あんだけ、「ミックスボイスは才能だ!」と叫んでいた僕がです。

 

本当にアホですよね、、苦笑

 

 

だってミックス習得できるって全然すごくないんですよ。

 

 

 

ミックスボイスはただの

 

“地声から裏声まで ズルズルとつながるテクニック”なわけじゃないですか。

 

 

 

すでにミックス習得している人はわかると思うんですけど、

 

そんなの、まともな知識さえ知ってれば

 

小学生だろうと習得できるようなレベル感のものなんですよ。本音を言うと。

 

 

 

だから習得できたところで、まっっったく自慢できる代物じゃありません。

 

 

いや、まだ自力でミックスを習得したのなら、自慢してもいいのかもしれないです。

 

 

 

でも、僕は自分の力で習得してません。

 

 

先生に教えられたことを、馬鹿の一つ覚えみたいにやった。

 

 

結果、ミックス習得できた。

 

 

それだけのことです。

 

 

 

言い換えれば、

 

僕は先生にもらったカンニングペーパーを片手に、

 

ズルしてミックスを習得したようなものなんです。

 

 

 

東京から沖縄まで行きたい時に、

 

ほかの人たちは頑張って自転車で進んでいるのにたいして、

 

僕は飛行機を与えられて、それにちょこんと乗っただけの話。

 

 

 

すごいのは僕ではなくて、まともな知識を与えてくれた僕の先生なんです。

 

 

 

実際、その知識をブラッシュアップしたものを

 

僕の生徒にも教えているわけですが、みんなあっさりミックスを習得していきます。

 

 

言っちゃ悪いですけど、そのレベル感で習得できるミックスボイスで、

 

ニヤニヤしながら

 

「ミックスできた僕は天才!」と思ってた頃を思い出すと、

 

恥ずかしくて顔から火が出そうです。

 

 

 

で、すっかり天狗になってたある日、

 

新しい先生の元でレッスンを受けることになったんですけど。

 

 

 

その先生に

 

「たいと君ってベルティングボイスは知ってるの?」

 

と言われて、先生はいきなり高音を“地声で”叫び始めたんですよ。

 

 

 

もう一度言いますけど、地声から裏声に繋ぐのではありません。

 

地声のまま「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ーーー!!!!」と叫んでるんです。w

 

 

ミックスの比じゃないくらいの、爆発的な声量と声の太さ。

 

 

壁がミシミシ音を立てて、スタジオの窓がパリン!と割れるんじゃないかと思いました。

 

 

僕の頭の理解を超えていて、もはや意味が分かりません。

 

 

 

「え、、地声って限界音域があるんじゃなかったっけ‥?」

 

と、目をパチクリさせるのが精一杯。

 

 

 

あまりのレベルの違いに、僕は目を丸くして

 

ただただボーッと先生を見つめることしかできませんでした。

 

 

 

で、家に帰って

 

ベットの上でゴロゴロして、こう思ったんです。

 

 

 

「あーあ、けっきょく歌は才能かいな。

 

ミックスならまだしも、地声で高音なんて出せるわけないじゃん。。」

 

と。

 

 

だから聞いてみたのです。

 

 

「先生は、元から歌が上手く歌えちゃったタイプなんですか?」

 

と。

 

 

 

そしたら、意外な答えが返ってきて。

 

 

「いや、そんなわけないじゃんw

 

全然高い声出なかったし、カラオケで2、3曲歌うだけで声枯れてたよ」

 

と先生。

 

 

僕は、先生のことを誤解してました。

 

 

先生は意外にも、超”がつく苦労人で、努力タイプのシンガーだったのです。

 

 

 

先生は学生時代、まったく高音が出なくて上手く歌えないところから

 

レッスンに通い続けてコツコツ練習を積み重ねてきたみたいです。

 

 

そして桁違いの歌唱力を手に入れたと。

 

 

しかも、

 

誰が見ても笑っちゃうくらい歌が上手くなった今でも、ガンガン勉強してトレーニングを毎日積

み重ねてるんです。

 

 

超がつく一流のシンガーでも

 

セミナー行ったり、レッスン受けたり、

 

海外の文献や本を買い漁って、徹夜で勉強したりしていた‥

 

 

 

なんでそんなに上手いのに努力するんですか?と聞くと、

 

「自分なんかまだまだ下手だよ。だから上を目指して学び続けるよ。

 

と言ってました。

 

 

 

この時、この人はただ歌が上手いだけじゃない。

 

本物の指導力を誇るボイストレーナーだと確信しましたね。

 

めちゃくちゃカッコいいと思ったし、憧れました。

 

 

 

そして同時に、先生に頼ってミックス習得して調子こいてた自分を殴り倒したくなりました。

 

 

お前アホかと。

 

 

 

でも、自分はまだまだヘッポコだと認めることができてからは、

 

毎日が本当にワクワクして、楽しかったです。

 

 

 

 

僕と先生は歳が近いので、時には厳しく

 

時には友達のように教えてもらいながら、

 

地声のまま高音を叩き出す方法をビジバシ叩き込んでもらいました。

 

 

 

その結果、今ではミックスで柔らかく高音も出せるし、やろうと思えば、地声のまま高音を当てることもできます。

 

 

もちろん、今でも僕のスキルはまだまだだと思ってます。

 

 

だから先生の背中を追いかけて練習し続ける日々です。

 

 

 

でも

 

「どんなスキルも正しい知識さえあれば、習得できるんだな」

 

と教えてもらえたのは、僕にとっては大きかったですね。

 

 

 

ボイトレは正しくやれば、

 

やればやるだけどんどん結果が出るめちゃくちゃ楽しいゲームです。

 

 

この世界に才能なんて関係ありません。

 

 

 

たぶん、こんなに努力が報われる分野、

 

努力の天井がプロレベルに到達できる分野なんて他にないです。

 

 

 

特に、ミックスとかベルティングなんて、完全に知ってるか知らないかの世界で、

正しい知識さえあれば、あとはやるだけ。

 

 

誰でもフツーに習得できちゃいます。

 

 

一緒にボイトレやって、どんどん上を目指しましょう。