ボイストレーナーの金子です。
ボイストレーニングの業界で、“ハリウッド系メソッド”と呼ばれているボイトレがあります。
エンターテイメントの本場、アメリカのハリウッドで生まれたメソッドの総称ですね。
たとえば、
nay発声(ネイネイ)やnou発声(ノウノウ)
mum発声(マンマン)goog発声(グッグ)
などなど。
かなり一般的になりつつあるトレーニングなので、
皆さんも取り組んでみたことがあるかもしれません。
「ハリウッド発ボイトレ」「LA発ボイトレ」
といった海外系のメソッドを
扱うボイトレスクールさんが教えているのはもちろんのこと、
最近ではYoutubeなんかでもフツーに解説されてることが多いですからね。^^
そして、これらのハリウッド系メソッドは、ミックスボイスを作るのに非常に効果があります。
だからこそ、ぜひ取り組みたいメソッドなんですね。
ただし、それにはある重要な条件があります。
それはハリウッド系メソッドをやる前に、“発声の土台を固めておく”ということです。
具体的には、
喉のパーツを整理整頓する「分離」や
歌に必要な筋肉を鍛える「強化」ですね。
まず、この2ステップで土台をガチッと固めて、
その上で
ハリウッド系メソッドをやれば、かなりの確率でうまく地声と裏声がミックスされるのです。
これは知ってる人も多いと思いますが、
ハリウッド系メソッドって、発声の土台作りのステップがないんですよ。
メソッドの方針自体が、
分離や強化をしないで、いきなりミックスの練習からスタートする
ことになってます。
そもそも、ハリウッド系は
すでに発声の土台がある 欧米人向けに開発されたものですからね。
英語という言語の特性上、彼ら欧米人は日常会話などでフツーに話しているだけでも
ミックスに必要な喉の筋肉を鍛えられやすいです。
だから、発声の土台を固めなくても、
いきなりミックスに特化した練習をやって上手くいってしまうのです。
土台固めをせずいきなりミックスの練習からスタートするハリウッド系メソッドが
欧米人にハマりやすいのも頷けます。
ただ、日本人の僕らが
彼ら欧米人と同じように、ハリウッド系メソッドをやるだけでは
ミックスを習得できないことがほとんどです。
実際、僕の周りには、
喉がグッと閉まるような苦しい体感になった人もいるし、
高音は出るようになったけど、裏声っぽい弱々しい高音に
悩んでいる人もいます。
ハリウッド系を一生懸命練習してきたのに、
上手く歌えず悩んでいる人が大勢いるのです。
もちろんこれはハリウッド系が悪いのではなく、シンプルに日本人の喉に合わないのです。
日本語という言語は世界中でもトップクラスに
喉声になりやすい上に、歌に必要な筋肉がこれっぽっちも鍛えられません。
つまり日本人の場合は、ミックスに必要な筋肉など、土台が足りない人がほとんどです。
だからそのままハリウッド系のミックスに特化した練習をやっても上手くいかないわけです。
実際、僕もLA発のハリウッド系の教室に通い詰めて
「ネイネイ!」「ノウノウ!」と練習していたときは
1mmも成長がありませんでした。w
土台固めの訓練をまったく教えてもらえなかったので、
音域も1音も伸びないし、声量も出ない。それどころか喉締めが悪化して
発狂してましたからね。笑
正直、土台が足りてなかった僕にとっては
めちゃくちゃ時間の無駄だったなと思います。
でも、そこから今の先生に出会って
発声の土台をガチッと固めてから、ハリウッド系をやったら面白いほど
サクッとミックスの感覚を強化することができたんですよ。
やっぱり、僕ら日本人がハリウッド系やるなら
元々主流だった、土台固めのステップをすっ飛ばしちゃうと厳しいですね。
僕らは
土台固め → ミックスボイスの練習(ハリウッド系含む)
の手順で手堅くミックスを習得しましょう。
ちなみに、僕がブログやYoutubeで解説するメソッドは
全てこの流れになってるのでご安心を。笑
それでは、ありがとうございました。
補足1
これ、あまり知られていないんですが、
そもそもハリウッド系メソッドって、分離・強化・調整(融合)などの土台作りを重視する正統派
のメソッドから、分離と強化のステップを
ゴソっとまるごと省いて開発されたメソッドなんですよ。
実は、ハリウッド系メソッドが開発される以前は、コーネリウス・L. リードという発声学の権威が提唱した
分離や強化などの、発声の土台を固める正統派のメソッドが
むしろボイトレの主流だったんです。
ただ、以前からアメリカのショービジネスのシーンでは
1秒でも早くシンガーにミックスを覚え込ませる必要がありました。
となると、シンガーに教える時間がない状況で、ちまちま土台作りに時間をかけてられん!という
話になります。
だからこそ、リードが提唱した正統派のボイトレメソッドから
発声の土台作りに必要な分離と強化のステップを省いて
地声と裏声を混ぜるミックスのステップだけを残したのです。
こんなふうにして 発声の土台作りを犠牲にした分、短期間でミックスを習得させることを
目指すハリウッド系メソッドが開発されたわけですね。
だから、発声の土台がない日本人がやると撃沈しやすいのは必然なんですね。
補足2
ちなみに韓国人も、欧米人同様に歌に必要な筋肉が鍛えられやすいです。
しかも、声がよく響いて聞こえる”フォルマント”という声の出し方が自然に身につきやすい
言語なので、やたらと声量があるシンガーが多いんですよ。
こういうのを知っちゃうと、
「日本人、さすがに不利すぎやしないか?!」と思う今日この頃です。笑