ミックスの習得はワンパターン
ボイストレーナーの金子です。
今日は、僕がボイストレーニングを始めてから
どんなふうにしてミックスボイスを習得することができたのか?
そんなお話をしていきたいと思ってます。
今回話すこともかなり重要なことなので、
最後まで集中して読んでもらえたら嬉しいです。
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僕がボイトレを始めて
最初に通ったのは、大手で有名なスクールだった。
先生が現役のプロシンガーで
歌唱力が高くて憧れたので、体験レッスンを受けた日に通うことを決めた。
ただ結論から言うと
音域が伸びることもなかったし、歌唱力も上がることはなかった。
もちろん、先生のことを悪く言いたいわけじゃない。
今でも、先生の圧倒的な歌声を心から尊敬しているし、
ちょくちょく一緒にご飯を食べるほど仲良くさせてもらっている。
ただ、先生は「トレーナー」ではなく、「プレイヤー」としての方が
輝ける人だったのだと思う。
一流のサッカープレイヤーが名監督になるとは限らない。
これは、シンプルに向き不向きの話だ。
その後も様々なスクールに通ったが、思うような結果は出なくて、
そんなことを繰り返してるうちに、一年がたったように記憶している。
これでダメだったら、本当にもう最後にしよう。。
そんな半分諦めた気持ちで、トレーナーを探し続けていた。
そんな時にあるトレーナーらしき人
のボイトレツイートが目に飛び込んできたのだ。
そこには、今まで僕がどんなに調べてもたどり着くことのできなかった
情報が溢れていた。
気がついたら、投稿されているツイート、ホームページの記事、
全ての情報を過去のアーカイブから
貪るようにして読み漁っている自分がいた。
そして直感的に、
この人なら僕の声を変えてくれるかもしれない。。
そんなふうに思えたのだ。
だからこそ、レッスンを受けてみることにした。
レッスン当日。
先生が「スタジオの最寄駅まで迎えに行きますよ」
とメールをくれたので、
駅に着くと、僕は先生が迎えにきてくれるのを駅の出口で待っていた。
それから5分くらい経っただろうか。
スマホを眺めながら、待っていると頭がヒヤッとつめたくなった。
空を見上げたら、一面灰色。
ポツポツと雨が降ってきたのだ。
「あー傘忘れたー。。最悪だ。。」と、ひとりつぶやいたそのときだった。
シトシトと降り続ける雨の中、ひとりの男が
傘を差しながらこちらに向かって、ゆっくりと歩いてくる。
190cm 近くはあるだろうか。
背が高く、がっしりとした体格をしているように見える。
そしてその男性は、僕の目の前で立ち止まり、
「金子くんかな?はじめまして。」
ゆっくりとした口調でていねいに挨拶した。
その声は、今までの人生で聞いたどんな声よりも
深みがあり、ずっしりとした響きのある声だった。
あまりのオーラに、僕の身体はカチコチになった。
そして、
僕の悩みを聞いた彼は、僕にこう言い放ったのだ。
「いきなり地声と裏声を混ぜったって
ミックスは習得できないよ。
まずは、地声と裏声を徹底的に分けることからやろう。」
彼はこう続けた。
「僕らの喉のパーツは、ごちゃごちゃに絡まってるんだよね。
たとえば、
開いた手の 小指”だけ”曲げるって難しいでしょう?
つい、薬指とかもいっしょに曲げてしまうと思うんだよね。
そんな感じのことが、たいとくんの喉で起きているんだよ。
だから、それぞれのパーツをバラバラに動かせるように、喉の整理をしてあげる必要があるんだよ。」
衝撃だった。
なぜなら僕は、
ずっと地声と裏声を混ぜるミックスボイスの
練習に集中してきたからだ。
必死に裏声にエッジボイスを混ぜて、ただの強い裏声になったり。
鼻に声を響かせようとして、ただの変な鼻声になったり。
太い声を出そうとして、お腹に力を入れても変化がなかったり。
でもそれは根本的に間違っていたのだ。
本当にやるべきは、地声と裏声を混ぜる前に、
地声と裏声を徹底的に分離すること。
さらに言えば、
唇、舌、喉、顎、仮声帯、喉頭蓋、、といった
喉の全てのパーツを全部バラバラに動かせるようにすることが
最優先事項だったのだ。
その上で”最終調整として”
地声と裏声を混ぜるミックスボイスの練習をするべきだったのだ。
実際、先生やその生徒さんは
毎日のようにコツコツと喉の整理をして、発声の土台をガッチリ固めていた。
その盤石な土台があるから、
ミックスボイスの練習に入ると、先生の弟子たちは
みんなあっさりと高音を出せるようになっていく。
そんな中で僕は
ひたすら地声と裏声をつないでいく練習だけに夢中になっていた。
「どうにかしてミックスボイスのコツを掴みたい」、と一生懸命になっていたが、
肝心の発声の土台がグラグラだったのだ。
この事実を目の前に突きつけられたときは、
時間をドブに捨ててしまった…と思い、ふかく後悔した。
だが、
土台がないところに、地声と裏声を混ぜる練習をしても上手く行かない。
そんなボイストレーニングの本質を理解することができて、今までのモヤモヤが
スッキリした気持ちの方が大きかった。
レッスンの帰り道、まだ雨は降り続けていた。
でも僕の心は、満点の晴れのように感じられた。
そこからはあっという間だったように思う。
大学に行って、バイトに行く。
そして、先生のレッスンを受けて、
自主練をする。
そんなハードな毎日を過ごした。
毎日のように、新しく学んだ手法で練習をし続けた。
そして、2週間ほどたったある日のこと。
その日もいつものように
バイトとレッスンを終えて、なまりのように重くフラフラになった足で帰宅し、
真っ暗な部屋の電気をつけて財布とスマホをテーブルに置いた。
そしてソファーに腰掛けて裏声を出した時だった。
僕は自分の耳を疑った。
小さい声ではあるものの、ずっと出せなくなっていた裏声が
出たのだ。
裏声を出そうとすると、スーッと息だけが抜けて
後から少し遅れて裏声が出る…
そんな症状が改善されていたのだ。
出ている…あんなに頑張っても出せなかった裏声が出ている…
今度こそ、、これならいけるかもしれない。
そこからは無我夢中になって、ボイトレに取り組んだ。
大学の講義なんて頭に入ってこなかった。
講義中もノートをとっているフリをして
黒板を見ながら小さな声を出し続けていた。
毎日のように高音を出す感覚が楽になっていくのが確かに分かる。
喉を締め付けられる感じが、抜けていく。
E4→F4→A4 →C5→E5…
地声で出せる音域がグングン伸びていく。
夢を見ているようだった。
胸の奥が、じんわりと暖かくなる気持ちだった。
毎日自分の喉が進化していく感覚が手に取るように分かったのだから。
そして結果的には、
上を向いて絞り出すように出していた高音は、裏声が混ざった楽な体感で出せるようになった。
地声のような高音を無理なく出せるようになった。
やっとこ声を揺らしていたビブラートは、自動的に波がかかり続けるようになった。
ゆっくりしかかけられなかったフェイクは、素早くかけられるようにもなった。
ピッチ感(音程をとる能力)が上がって、音程を外さなくなった。
音程をまともに捉えられない、いわゆる音痴だった頃の
自分はどこにもいなかった。
まさに、どんな技術にも対応できる
「自由な喉」を手に入れたような感覚だったのだ。
あの時、先生の言葉を信じることができて良かったと心底
思っている。
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僕はミックスボイスを目指すあまり、
地声と裏声を混ぜていく練習「だけ」に集中してしまってました。
それ故に、貴重な時間を無駄にし、裏声がだせなくなるほどまでに
症状が悪化しちゃったんですね。
だからこそ、これから歌唱力を高めていく人は、
① 喉に関わる全てのパーツをバラバラに動かせるようにする。(分離)
(地声の筋肉 裏声の筋肉 唇 仮声帯 喉頭蓋 舌…etc)
② それぞれのパーツを歌に使える形まで鍛える。(強化)
③ 最後に、それぞれのパーツを最終調整する。(調整)
この3つのステップを踏んで、
着実に歌唱力を高めて欲しいなと思ってます。
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